00-10 (Japanese Only)

2003年 その3

09/06  <どど君、最近考えた事。>
 最近、気付いたのは、アートの価値は他人が決めるものなんだなぁという事。

 1)先日グッゲンハイム美術館で、『ピカソからポラック展』を見に行った。ここに展示された1900年代から1950年代の、すでに絵画の世界では古典と位置付けられている作品群は、それぞれ今みてもなんだこりゃの世界。 四角、丸を並べてみました、とか単一の色をボヤーっと塗ってみました、みたいなのが会場に並んでいる。

 こういったものを、素晴らしいと思って、私の美術館に是非収めたいという人がいて、展示会を開く。この人が、作品の価値を決めている。そしてこの展示会に訪れた人達がまた、ピカソはやっぱすごい、とか、シャガールは笑えるとか、クレーはなんかホッとさせられる、等と思い思いに価値を決めていく。

 この時点でこの絵を描いた作家に、作品の価値を決める決定権はない。作品の良し悪しは、作品を見た他人が決める。作家本人じゃない。

 2)先月末、ブライアントパークでキューブリックの “ 2001年宇宙の旅 ” を野外無料上映をしていたのを見に行った。この映画に使われていた音楽が妙に気になり、(この映画は以前から何度も見ていたが、音楽自体に興味が行ったのは今回が初めて。)家に帰って調べてみたらジョルジュ・リゲティという人の作品だったことがわかった。
 早速、タワーレコードに行って、 CD を数枚購入。ハマった。全然知らなかったのだが、彼は現代音楽の巨匠とされている一人で、今も元気に活動されてるとか。

 リゲティがいいからいいのではない。
 僕(リゲティにとって他人)が聴いていいと思ったから、リゲティはいいのだ。リゲティ自身が『俺は巨匠だぜ!』と言ったのではない。
彼の音楽を聴いた人が『彼は巨匠だ。』と思ったからリゲティは巨匠なのだ。

 3)最近、創作意欲が湧いているどど君。ここにきてだいぶ作風に変化が出てきた。我ながらすごい、と思っちゃう曲も出てきた。クレパトやキタノホテルで世界初演等と気取って演奏してみる。演奏後すごいかもとやっぱり思う。この調子でバンバン曲を書いて、レコーディングしちゃおうかとも思う。

 ふと現実に目を移し、どど君をとりまく状況を見つめ直す。
*『 DODO 』の売れ行きはどうだ?
まだ近所の CD 屋さんに一枚置いてあったよ!という両親の電話報告にホッとしている域を出ない。*今年4月に収録した新作のリリース見通しは?いまだに、明るい話はでてこない。交渉中ということらしい。こんな調子では、現在書いている新曲の CD 等、いつの話しになるのやらという案配。

 こんなにどど君ってすごいかもと思っているどど君でも、事態は進展していない。アートは自分が決めるんじゃない。他人が決めるというのを身にしみて感じる。

 寺島靖国は、
『どどさんの曲、難しいの。明解なメロディが欲しいなぁ。』と『 DODO 』を評した。きっと彼は正しい。そう言われて、作家である僕にうんぬん言う権利はない。
 最新曲を聴いた、僕の親しい友人は
『相変わらずメロディはないし、まず売れない。』
と一笑に付された。きっとその通りなのだろう。

 アートの価値は他人が決めるもの。そこだけは、わかっていようと思った今日この頃。これって当たり前の話しでした?

9/9&10  < Franc Lacy Quintet at Zinc Bar >
 かつてロイハーグローブのバンドにいたり、現在ミンガスビッグバンドでおなじみのトロンボーン奏者、 Frank Lacy から仕事の依頼が来たのが、 7月末の事。

 およそ2年前に、ニュージャージー州のとある大学のパーティーの仕事で共演した事があったのだが、それ以来の突然の電話。驚いたし、僕の事を覚えてくれていて、仕事をいただけた事も嬉しかった。

 その後、全く彼から音沙汰がなくなる。
心配になって本番4日前に Frank に電話をしてみるが留守電状態。ギグ前日になっても電話がこない。リハとかしないの? それとも。。。。

 “ ギグの共演者の知名度、演奏会場の知名度が高まる程に、ギグのキャンセル度も高まる。” という『百々徹の法則』が頭をよぎる。

 今回の演奏場所、 Zinc Bar は NY のジャズシーンを代表するクラブの一つ。一度出てみたいと思っていた場所のひとつ。

 Franc Lacy & Zinc Bar 。キャンセル度高い。

 共演予定のベーシスト、 Howard Britz から電話が来たのが、本番初日の9日の朝10時。

『今、 Frank Lacy から電話が入ってトールに伝言を頼まれた。ギグはある。けれど、 Frank Lacy はパリで足留めをくらって出演はできない。代役が来るらしい。』

 やはりただではいかない。でもギグはある。救われる思いで出陣。

 共演者は、 Jay Rodriguez ( ts & fl ), Joe Ford ( as ) Donald Edwards ( ds ), Howard Britz ( b )。

 ぶっつけ本番のスタンダードセッション大会となって、まぁそれはそれで楽しくできた。  Donald Edwards が叩けば、なんでも楽しくなるものだ。

 9日、10日の二日間、いい汗かきました。聞きに来てくださった方々、ありがとうございます。

 それにしても Frank Lacy はどうなっちゃったんだろう?

9/20  <結婚式>
 この週末、友人の結婚式に招待されまして、 マンハッタンから車で2時間、 NY 州北部にある Athens という街に行ってきました。電車で行ったのですけれどね。

 結婚されたのは、ここのページで度々登場している、画家のジョエルさん。2年前に参加させていただいた Catskill Jazz Festival のプロデューサーでもあり、それ以来、度々、食事会に招待していただいたり、クレオパトラズニードルに頻繁に足を運んで応援してくださっている方。
 いつも彼の側におられた、お相手のヴィッキーさんも、そういうわけでよく親しくさせていただいているお方。

 ミュージシャンとして演奏の仕事で結婚式に行く事は多々ありましたが、友人としてゲストで行くというのはアメリカ生活8年にして初めての事。嬉しい事。

 結婚式は土曜の午前中という事で、前の晩に着いて、ジョエルさんのはからいで、彼の友人のロバートさんの邸宅に一晩泊まらせていただきました。
 築200年というロバート邸は、広い芝生に囲まれた、3階建て。アンティークに囲まれたゲストルームは、マンハッタンでこの部屋に住もうとしたらゆうに家賃1000ドル以上はするといった豪華な内装。家のあらゆる壁に、絵画が飾られてあり、もちろんジョエルさんの作品も数点ありました。お城だ。城主ロバート氏、一体何物ぞ。

 翌朝、快晴。お日柄大変よろしい中で、ジョエルさん宅の隣にある教会で、式がはじまりました。
 なにしろ、ジョエルさんヴィッキーさん、お二人とも2度目の結婚。お二人ともそれぞれ二人のお子さんがいらっしゃる。
(因に、昨年、ジョエルさんの長女の結婚式のピアノ演奏の仕事を任され、フロリダへ行ったこともこの HP に書きました。)
 お二人、それぞれのお子さんに携われて、ヴァージンロードを歩いていく。その姿、とても微笑ましい。
 参加者皆で、賛美歌を歌ったりとか、何か聖書の言葉を唱えたりとか、宗教が当たり前に生活に密着している様子が、直に伝わってきました。キリスト教徒がキリスト教的に式をしている。
(周りが起立するので起立して歌うふり、唱えるふりしていただけの謎の東洋人が教会にいても、神様、寛大。)

 式後は、ジョエル宅でパーティー。アメリカ人、こういう人の結婚パーティーでも、次期大統領選の話しで盛り上がるからすごい。僕もシャンペンひっかけて英語をがんばってみるが、トピックが難しい。皆、博識というか、よく新聞読んでるんだなぁ。まいった。

 ジョエルさんの長女が最後に見事な祝いのスピーチをして、涙もろいどど君、なんだかグっときました。皆で乾杯で締め。

いつかジョエル&ヴィッキーさんが日本語を勉強して、この HP も読める日が来るかもしれないことを想定して最後に、

おめでとうございます。いつまでもお幸せに。

9/23  <芸の道は細くて長い。>
 先日の日曜日のクレオパトラズニードルのジャムセッションにて。

 若い日本人男性4人組が遊びに来てくれた。司会をする僕に、
『日本人の方ですよね。楽器やります。挑戦させてください!』
と爽やかに言われ、どうぞどうぞとサインアップシートに名前を書いてもらった。

 4人組、ベーシスト、ギターリスト、シンガー、そしてその友人という内訳。ベース、ギター、なかなかいい音を出していた。ところが時間切れで、シンガーの彼に順番を廻すことができなかったので、申し訳ないと彼等の座るテーブルへ挨拶にいった。

 『すみませんが、時間切れです。ごめんなさい。』
残念そうな表情を浮かべるシンガーの彼。
『日本から来ていて、明日帰るんです。シットインしようと来たのですけれど。駄目ですか?』

 申し訳ない。取り繕おうと、色々話しをしてみる。彼等は、現在都内の大学3年生、ジャズ研に所属して時々、ライヴハウスで演奏しているという。夏休みを利用しての海外旅行。バークリーに留学中の友達がいて、ボストンへ行き、そこでクレパトのセッションの事を聞いてこの日、来てくれたという。

 彼等の姿に、ジャズ研出身だった昔の自分を見る思いがして自然と親愛の情が湧いた。もっともジャズ研時代の自分は、 NY のジャムセッションに参加するなんて夢にも思わなかったのを思い出し、彼等が果敢にシットインする様子を見て、頼もしく思った。

 それと同時に、大学のジャズ研生ならば、今、ジャズシーンで何がホットで、誰がホットでとか、そういう情報を貪欲に漁っているに違いないと、すると、ひょっとして『百々徹』なんていう名前をまぁ、顔はわからないにしてもちょっとは、雑誌やらでこの名前を見た事があるのではないかと、恥ずかしながら、まぁ期待したわけです。あぁ恥ずかしい。恥ずかしい。

 『ここでセッションのホストしてます、百々徹です。』と自己紹介する。

 『え?どど。。。さん?』
 『へぇ、珍しい名前ですね。本名ですか?』
 『何をやる人なんですか?』

 彼等が来場した時、既にピアニストが多数来てくれていたので、僕はピアノは弾かず、マイクを持った司会者姿しか見せていないので、彼等のこの質問は当然なのですけれど。これでも、昨年、一応、日本で CD も発売されたジャズピアニストという肩書きを持つどど君。
ちったぁ、ジャズ研生に知られてないの?

 『ニューヨークに住んで5年、ピアノをやってます。その前にバークリーに行ってましてアメリカ生活は、もう8年になります。』

 ヘー、そうですかー、と彼等。
 『バークリーってことは、じゃ、アキコグレースさんとか知ってます?ここのセッションに来たりするんですか?』
彼女とはバークリーで同期だったし、あれ、彼女、今、日本にいるんじゃなかったかなぁ。

『日本とかで演奏したりするんですか?』
たまにね。昨年12月に少しツアーしたりしたんだ。

 少しむきになって名前を出してやろうと
『そのツアーで一回、 TOKU とやったりしたんだ。』
と言ったら、
『へー、 TOKU さんとどうやって知り合いになったんですかー?』
とシンガーの彼が身を乗り出してきた。 NY にいると色々と出会いがあるもんだよ。

 セッションの最後の曲が終わりそうになるのを見て、
『また日本でやる事もあるから、その時はよろしくね。』
と彼等のテーブルを離れ、ジャムセッション終了を告げる挨拶をしに、マイクスタンドまで戻る。

道のりは遠い。どど君はそう思いながら、
『 Thank you for all coming out tonight. Get home safe. Good night. 』と締めた。

9/25  <10月12日(日)夜7時から J-WAVE 聞いてね。>
 ニューヨークシティオペラの副指揮者、山田敦さんは、毎週日曜日の J-WAVE (日本の FM 81.3)夜7時からの『 MARUNOUCHI CLASSY CAFE 』という番組の中で、『山田敦のクラシック大冒険』というコーナーをお持ちでして、この度、不肖、百々徹、ゲストで出演させていただくことになり、収録のため、ミッドタウンにある J-WAVE の NY スタジオへお邪魔してきました。

 メイン DJ の金子なおさんと日本の電話回線でつなぎ、 NY の山田さんと僕が3人で会話をするという案配。
 クラシック音楽をより身近にしようというのが番組のテーマらしいのですが、たまに企画に煮詰まった時には、山田さんの友達紹介コーナーになるらしく、今回、ありがたくも、僕にお声をかけてくださったとか。

 一応、台本ではジャズとクラシック音楽の接点をはかるのがテーマになっていたのですが、話した事といえば、山田さんとの出会いについての内輪話しに終始したような、ま、これを読んでくださっているありがたい方で、時間がありましたらちょっと聞いてみてください。緊張したどど君の決して滑らかではない口調が堪能できますから。

 そうそう、台本に、僕の名前、百々徹にふりがなで
『ももとおる』となっていて、初めの挨拶時、
『ももさーん。はじめまして、今日はよろしくおねがいいたしまーす。』という日本の金子さん。すかさず、山田さんがフォロー。
『あのね。ももさんじゃなくて、どどさんですから。』
もーいいー。ももでもどどでも変な名前に変わりはないんだから。世の中には、960人の百々徹ファン以外に、実に多くの人々が日本に生活されていることを痛切に感じいった次第。

 という訳で、最後に、もう一度。
どど君登場の『山田敦のクラシック大冒険』は
10月12日(日曜日)夜7時から8時までの FM エイティワンポインスリー J-WAVE の『 MARUNOUCHI CLASSY CAFE 』の中で放送予定です。

 それから山田敦さん、来る10月11日(土曜日)にニューヨークシティオペラの『蝶々夫人(プッチーニ)』を指揮されます。 NY での舞台は昨年に続いて2度目。
相当、気合い入ってる様です。詳しくはこちら。
http://www.nycopera.com/www/index.cfm

9/30  < HIROMI を聞く。>
 HIROMI を聞きに、 JAZZ STANDARDへ 。
 彼女の噂は聞いていた。話題のデヴュー CD も即、買っていた。ライヴは、どんなもんかいなと、こっそりとチェックしに行った。

 昨年、ボストンでちょっと挨拶したことがあったのだが、コソコソとテーブルに着いたところ、いきなり
『ドドさんですか?』と彼女から話しかけられた。

『来て下さってありがとうございます。 HP よく読んでます。いつもあの文章に笑わせてもらっています。』
あら、そうだったの?

『 CD、聞きたいのですけど。』
この日、同行した友人に『 DODO 』を購入していただく予定だったので、持ち歩いていたわけで。彼女、早速、買ってくれた。

『帰りの車で、聞きます。あ、写真とっていいですか?』
あらっ、ツーショットでカシャッ。
あの、僕も焼きまわしていただけます?
送ってくれるの?ありがとー。
なんだ、ヒロミちゃんって呼んじゃうぞ。

 演奏始まる。
髪を振り乱し、身体を踊らせ、一心不乱にピアノに向かう。ヒロミちゃんが HIROMI に変身。
遅い球をいかに速く見せるかで勝負しているどど君にとって、彼女のダイナミックな演奏を支える、指さばきに感銘。
僕の聞こえない音で音楽をしている。すごい耳を持っているのだろうなぁ。圧倒され、会場を後にする。

これが HIROMI ワールドかぁ。
これから彼女はどこへ向かうのかしら。
そしてどど君の運命はいかに?

10/7  < Megumi を聞く。( Greg Osby Quartet )>
 Megumi Yonezawa を聞きに、ヴィレッジヴァンガードへ。噂は聞いていた。ジェイソン・モランが抜けた後にグレッグ・オズビー バンド加入して半年。どんなもんかいなと、こっそりチェックしにいった。

 グレッグ・オズビーの後頭部がかゆくなるようなフレージングを、妖しいヴォイシングで支える。ジェイソン・モランの弟子という彼女のソロは、彼のそれを彷佛させるダークな雰囲気を持つ。

 最後に、遊びにきていたジェフ・ワッツが一曲シットインでショーは終了。

 まいっちゃうなぁ、すごいなぁ、とコソコソ帰ろうとする矢先、
 『もしかして百々さんですか?』と Megumi に、話しかけられた。

 『バークリーでリサイタル見た事あります。 CD も持ってます。』あらら。そうなの。

 『私、最近 NY に引っ越してきたのですけど、聞いたところ、百々さんと同じ建物らしいです。』
あららら。もう近所のスーパーにあられもない格好でお買い物いけなくなるじゃない。

 ヴィレッジヴァンガードに出演した人と地下鉄で一緒に帰るなんて事初めて。メグミちゃんって呼んじゃうぞ。

 ヒロミちゃんといい、メグミちゃんといい、えらい才能が出て来た。彼女達はいったいどこへ向かうのだろう。そしてどど君の運命は?

10/12  <お詫び>
 なんでも、 J-Wave の『 Marunouchi Class Cafe 』で百々徹、出演してなかったと、両親から電話がありました。僕も今、関係者にあたって事情を聞いているところでして、わかりしだい報告いたします。
 時間をつくってラジオを聞いてくれていた方々に、御迷惑をおかけした事、この場をかりてお詫びいたします。

 おっと、今、その関係者から電話が来まして(山田敦さんですけど)来週、19日(日)夜7時から8時に延期になったそうです。

 全国960人の百々徹ファンの方で、 J-Wave の聞ける関東近圏の方々、もう聞いてられないよ、といわずにどうか、来週こそ。
たぶん流れますから。

10/11  <マダムバタフライ>
 山田敦さんの2度目の NY 公演となるニューヨークシティオペラの『マダムバタフライ』を見る。
 指揮している後頭部がよく見える、とてもいい席を山田さんに世話していただき、 VIP 気分。

 幕が開いて、しばらくは、おっ、山田さん、(指揮棒を)振ってる振ってる、(髪を)かきあげてるかきあげてる等と見ていたのですが、そのうち、すっかりお芝居に夢中になってしまいました。

 結婚した後、子供も出来たのに、3年も見捨てられ、挙げ句に、別の奥さんを連れて来て、子供を引き取ろうとするピンカートンを見て、絶望して自殺する蝶々夫人の悲劇。
 プッチーニの音楽と歌手の声が、ピークに達すると、涙腺がすごく刺激されるのは何故でしょう。ハンカチで涙をぬぐっていたお客さん、僕のまわりに結構いました。僕もティッシュでお鼻チーン寸前でした。

 3時間近い大作。ブラボーのかけ声のもと、観客総立ちでカーテンコール。我らが山田敦さん、気持ちよさそうに笑顔で拍手に答えられてました。いい仕事されてる。

 見るものですね。世の中にはいいものが色々あるんですよね。山田さんからホントいい勉強させてもらっています。

10/24  < TOKU @Sugar Bar >
 TOKU の NY 初リーダーライヴにて演奏。場所は72丁目の西にある Sugar Bar 。メンバーはベースに塩田ノリヒデ、ドラムに高橋シンノスケ、そして2セット目からギターのアダム・ロジャースが加わった。

 観客の中には、ロン・カーター、ランディ・ブレッカー、ルー・ソロフ、グラディ・テイトがいた。やった NY だ!! TOKU 人脈の広さよ!!

 TOKU のレパートリーは、いわゆるジャズソングからポップス、 R&B 、インストではストレートアヘッド系と幅広い。アレンジものも多く、久しぶりに、まばたきをし忘れる程に譜面を読みこなしつつ演奏した。リハーサル2度もしたのに、譜面がかなり読めなくて、譜面読解能力の衰えを感じたりもしつつ、それでも楽しくやり終えた。会場満員の中で演奏するって最高です。

 次回はもっと曲も理解してできると思うので、きっといいものになること間違いないので、12月18日鳥取からスタートする TOKU ツアーとても楽しみにしているドド君です。

 えっドド君日本に帰ってくるの?そうなんですよ。12月後半、 TOKU ツアーに参加させていただき、1月も少し、ドド君トリオでライヴをやる予定。詳しい日程分かり次第 HP にアップする予定ですのでよろしくです。

11/5  < Hiro Koko レコーディングセッション>
 11月4日5日と、三重県在住のシンガー、 Hiro Koko ことツガヒロコさんのレコーディングに参加。
 井上智さんがプロデュース、アレンジとギターを担当。ドラムにグラディ・テイト、ベースにショーン・スミス、サックスとフルートにフランク・ウェスという布陣。(やった NY! )
 スタジオは増尾さんの The Studio 。エンジニアはカツさんにエイジ君。

 『 Fly Me to The Moon 』やら『 But Not For Me 』といったスタンダード中のスタンダードを13曲収録。

 なにせ、グラディとショーンがスイングするもので。
 なにせ、井上さんのコンピングが気持いいもので。
 なにせ、フランク・ウェスがレコードを聞いているかのような、歌心あふれるプレイをするもので。(80歳を超えているらしい。信じられない程元気。)
 Hiro Koko さんがまた素直に優しく歌うんだ。

 この環境でドド君、ピアノ弾きました。その瞬間に求められている音を出そうと心がけました。ここは、アクセントをつけてとか、ここは優しくとか、ここは弾かないとかここは間を埋めるとか、いかに歌を引立てるか。歌の伴奏する時、音の選択がとても問われるものです。
 その、なんていうかな、音のパズルをはめていく感じっていうのかな。一枚一枚ピースのはめ方次第で、出来上がりの絵が、2次元から3次元に展開するっていうのかなぁ。それにやっぱリズム命っしょ。本気でスイングしちゃったら、もう4次元パズルの出来上がりって訳よ。

 かなり充実したいいレコーディングセッションだったのでは。仕上がりに期待です。

11/18  < NY の秋>
 秋ですね。最近、おいしい物が無性に食べたくなり ZAGAT をめくり、衝動的にフランス料理とか中華とか、レストラン探検。ちょっとした贅沢気分が味わえるのが楽しく思えるようになってきたドド君。
 おいそうに御飯を食べているお客さまの顔を見ながらレストランで演奏する機会も多いのですが、たまには僕もうまいものが食べたいのよね。
 だいたい、イタリア物食べたかったらイタリア街に行けばいいし、焼肉食べたかったらコリアンタウンに行けばいいし、世界のおいしいものが食べられる NY っていまさらながらすごい! NY に住んでいながら見失ってるところだったなぁと思うわけです。

 先日、ブルックリンに住む、ピアノの Aaron Goldberg 宅に遊びにいった。ローズとグランドピアノで2台ピアノセッションした。ボストン時代から知り合いだったのだけれど、ゆっくり話しもできたのは初めて。いい時間だった。
 一流ミュージシャンがたくさんいる NY なのに、目の前のギグに追われ自分だけの殻に閉じ困りがちになるどど君。もっと回りの優秀なミュージシャンと交流をはからないとと、思うわけです。

 一昨日、キタノホテルでサンデーブランチのショーをやらせていただいた。お一人20ドルでお昼御飯とトール・ドドの音楽。
 演奏メンバーはマット・クロージー(ベース)クインシー・デイヴィス(ドラム)にジェレミー・ペルト(トランペット)がフィーチャーゲストで吹いてくれた。
 予約が低調だったらしく、キタノの企画担当の春日さんも頭を悩ませていたみたいだが、当日、50人弱のお客さまが訪れ、少しホットされたとか。
『百々徹』という名前がまだまだお客様をひきつける名前になっていないのに関わらず、僕にこのようなコンサートの場を与えてくださった春日さんになんとお礼をしたらよいのかわかりません。
 競争馬は、騎手のムチが痛いから走るのではありません。自分を信じてお金を賭けてくれている人がいるから走るのです。春日さんのギャンブルに応えようとピアノ弾く百々徹がいました。

 そして、一流のレストラン、一流のミュージックが溢れる NY で、この日曜日の昼下がりにキタノホテルを選択され足を運んでくださったお客さまの存在。しびれました。
 ひょっとしたら万場券をちょこっと買ってくださっただけかもしれませんが、馬本人はとても嬉しいのです。ドド君の喜びのいななきを聞き取ってくれたら光栄です。ありがとうございました。

11/27  <日本ツアー日程プレヴュー>

詳しくはスケジュール欄を参考にしてくださいませ。

*百々徹ツアーDec2003-Jan2004*
12/18、19、20、21: TOKU 山陰地方ツアー(塩田ノリヒデ、藤井信昭)
  まだ詳しい場所がわかっていません。
12/22(月)  :鈴木良雄、TOKU、セシルモンロー:新宿J
  チンさんと初共演。
12/23(火)  :塩田ノリヒデグループ(太田剣、高橋信之介):Alfie
  太田剣さんと1年振りの共演。
12/24(水)  :TOKU(塩田、藤井信昭):Alfie
  クリスマスイヴはTOKUの音楽で。
12/26(金)  :百々徹トリオ(大坂昌彦、塩田):お茶の水ナル
  今年ドド君の仕事納め。
12/31−1/1
  河口湖までバイクでかっ飛ばして初日の出拝んじゃうわけよ。
1/2、3、4(金、土、日):大坂昌彦ジャム:横浜モーションブルー
  2004年初仕事はモーションブルー。
1/7(水)    :小林航太朗、三木俊雄、安保徹、高橋徹:藤沢BECK
  でしゃばりエディターの愛息のベーシストと初共演。ほぼ徹組の演奏。
1/8(木)    :百々徹トリオ(大坂、塩田):古河アップス
  初めてお邪魔します。
1/10(土)   :峰厚介トリオ:横浜JAZZ IS
  ここも初めての場所。峰さんと1年振りの共演。 
1/12(月)   :塩田グループ(太田剣、多田誠司、広瀬潤次):茶ナル
  多田さんお久しぶりです。僕の事覚えていらっしゃいますか?
1/14(水)   :澤田一範(as)、山田穰(as)、小島 勉(ds)、小林新作:藤沢BECK
  でしゃばりエディターの企画・第二弾。BACKSTAGE“12”の仲間と。
1/20(火)   :百々徹トリオ(広瀬、佐藤ハチ):新宿ピットイン
  ピットインに帰ってまいりました。
1/23(金)   :塩田グループ(TOKU,多田誠司、藤井):Alfie
  塩田グループ、スイング全開。
1/24(土)   :百々徹トリオ(高橋、塩田):名古屋ラヴリー
  ラヴリーに帰ってまいりました。
1/25(日)   :百々徹トリオ(大坂、塩田):NHKFMセッション505公開録音。
  全国放送されちゃいます。
1/27(火)   :百々徹トリオ(大坂、塩田):Body&Soul
  ツアーも大詰め。大坂さんとツアー最後の演奏。
1/28(水)  :塩田グループ"SFKUaNK!!"(NARGO,TOKU,北原雅彦、太田剣、石成正人、藤井信昭):横浜モーションブルー
  ドド君、キーボードに挑戦。現在、電源の入れかたから学習中。
1/29(木)   :百々徹トリオ(高橋、佐藤ハチ):吉祥寺赤いカラス
  三多摩地区の皆様、ここに集合!
1/31(土)   :百々徹トリオ(高橋、塩田):黒磯グランボア
  前回のお客さまの熱狂的な歓声、いまだに覚えてます。ツアー最終日。
2/2(月)    :渡米。
2/3(火)−春  :冬眠。
12/6  <日程追加>
 ほぼ日本でのライヴ予定が決まりました。変更追加分の紹介です。
12/19(金)広島SOHO
12/20(土)岡山バード
12/21(日)鳥取モッブス
TOKU ツアーは19日よりスタートとなりました。
岡山の三寺さーん、待っててねぇ。ふゎー。(楽屋受け失礼)

1/16(金)デュオ with 井手直行 大泉学園 inF
1/21(水)デュオ with 川嶋哲郎 大泉学園 inF
井手氏とバークリー時代毎週行っていたデュオセッション思い出されます。川嶋氏とは初共演。楽しみです。

1/18(日)百々徹トリオ(大坂昌彦、佐藤ハチ):深沢メイプルハウス
世田谷のライヴハウスへ初めてお邪魔します。

というわけで、詳しくは本 HP の スケジュール欄を参照なさってください。
では。

12/7 <帰国前夜>
 ボストン時代に購入し、ここ6、7年、愛用してきたジャンパーコートのジッパーが壊れた。歯がうまく噛み合わず、前が閉まらないのである。これでは防寒具としてよろしくない。寿命かと思われた。

 ところが最近、近所に靴直しやジッパー直しのお店があるのを発見。11月の中頃、コートを運び込んだ。

 受け付けのヨーロッパ系の年配の女性が、奥の作業場へ僕のコートを持ち込む。靴のソール直しの最中だった作業員が、持ち込まれたコートを机にひろげ、ジッパーの具合を調べる。
 数分後、戻ってきた彼女は
『ジッパーそのものを取り替えないと駄目だ。40ドルでできるよ。』という。
 40ドル。結構高い修理費用に思え、いったん店を出た。

 40ドル払うなら、いっそ新しいコートでも買おうかという気になり、11月下旬、ダウンコートを買った。スポーティなデザイン。鏡に写る自分が、どことなく若々しい。なんといっても前が閉まるので暖かい。

 新しくクローゼットの仲間入りを果たしたダウンコートの隣にかかる、ジッパーの壊れたジャンパーコートの背中が妙に寂しい。
 長年、厳しい冬を共に乗り越えてきたコートだ。
 ジッパーさえ直せば、いい話しだ。俺はお前を見捨てない。そう思いなおし、12月の初め、再び先程の店に行く。

 対応してくれたのは、前回とは違う若い女性だった。やはりコートを奥の作業場へ持ち込み、作業員とジッパーを調べている。

 数分後、彼女は戻ってきた。
『いいですか。すこし調節してみました。ジッパーのツマミを前に引っ張らないように、なるべく寝かせた状態でツマミを持ち上げてください。するとホラッ、』
と、ジッパーの両側の歯が見事に噛み合い、前が閉まったのだ。

 早速、コートを着て、自分で試してみる。
成る程、お店のお姉さんの言う通り、ジッパーを閉める時、少し神経がいる。うまく両側をそろえてゆっくりツマミをもちあげないと、歯が噛み合わない。しかしコツをつかめば、大丈夫。愛用コートの復活である。

 いくらですかと訪ねると、お姉さんは、お金はいいという。
 40ドルかかって別のジッパーに取り替えられるかと思いきや、あっさり無料で直ってしまったコート。

 僕はここに、人生の妙といいますか、ちょっとしたバランスのうえで世の中は動いているもんだなぁ。なんて思ったわけです。そのバランスの程は、愛用コートのツマミの上げ方ほどに繊細なのかも。

 帰国間近となりました。僕は今、どちらのコートを着て行こうか、考えているところです。

12/15  <帰国>
 10日に帰国後、ヴィザスタンプをもらいにアメリカ大使館に行ったり、親戚の挨拶まわりをしたり、お墓まいりに行ったり、やることやってます。実家のピアノの調律もやったし歯医者にも行きました。(あと7回は歯医者に行くことになりました。とほほ。)

 明日から、ベースの塩田君とリハーサルをして、夜はライヴハウス巡りする予定。そろそろ夜更かしして、19日からの TOKU ツアーに耐える体力作りしていかないと。そろそろ立川市の百々徹さんから、NY在住ミュージシャン百々徹にしていかないと。

 来る金曜日の広島SOHO より百々徹強化月間が始まります。全国960人の百々徹ファンの皆様、応援よろしくお願いいたします。ライヴハウスの予約はお早めに。因みに立川市の百々徹さんは、明後日、2回目の歯医者さんの予約が入ってます。
12/27  <2003日本ツアーその1>

1)広島、岡山、鳥取と TOKU ツアー。ツアーマネージャー三根さんの運転によるヴァンによる移動。ホテルチェックイン、リハーサルして本番、打ち上げ。こんな感じであっという間に時間がすぎた3日間の旅。
 広島ではお好み焼きは食べれず、岡山では吉備団子を食べれず、鳥取では砂丘を見ることもできなかったかわりに、広島では Stevie's というソウルバーで踊り、岡山ではNYで知り合ったトロンボーンの三寺さんや、寿司田でごちそうしてくださった大阪のナミエさんとその友人の方と再会できたり、鳥取では移動中の山道から見た雪の積もった壮大な景色を堪能。
 日本は広い。

2)鳥取の会場で、僕のCD「 DODO 」と幻の自主制作版「 Melancholy Cats 」を持ってサインを求めてこられる方に会う。聞けば鳥取で「酔族館」というジャズバーを経営されているとか。「 Melancholy Cats 」を持っている方に鳥取で出会うとは思いもしていなかったので、僕のほうがびっくりしてしまった。なんでもSJ誌で寺島靖国がほめていたのでディスクユニオンから取り寄せたという。寺島やるじゃねぇか。

3)鳥取の打ち上げの際、ベースの塩田氏、階段から転び落ち、左手を負傷。冷やピタしても痛みが激しく、病院で検査したところ、小指側の甲の骨折。彼、今後数ヶ月、ギブスはめたエレキベーシストになる予定。

4)チンさんと初共演した新宿のJのピアノ、ひょっとしたら東京のライブハウスで今一番いいピアノかもしれない。聞けば、昨年、改造して世界に一台しかないというハイブリッドピアノにしたという。本体はヤマハなのだが、中の弦やハンマー等すべてのパーツは世界中からいいものをとりよせたという。とてもいい音がした。

5)TOKU の人脈の広さは今更ながらすごい。25日、 Body & Soul で、トミーキャンベルバンドのヴォーカルセッションバンドで彼が歌っているのを聞きに行った際、会場にいたお客に、ピンキーとキラーズの今陽子さん、元おニャン子の渡辺まりなさん、小澤征爾さん(すれ違った。挨拶できなかった。)、その娘さんの征良(せいら、と読む)さん、ジャズシンガーのチャリートさん、 AKIKO さんがいた。華やかよのぉ。

6)26日のお茶の水 NARU の百々徹トリオ。満員御礼。お客様がバンドをとりかこむようになっている会場のセッティングのせいか、顔をあげるとお客さんと目が合うのが、はじめ緊張につながって、たちあがり堅い演奏になってしまったが、後半になるにつれ、僕のMCの声の張りも強まり、アンコールも求められる程にもりあがることができて、なんだかとても幸せだった。今年のいい仕事納めとなった。
この日の深夜、東京で初雪。