Reviews on 116 West 238 st.

Swing Journal 2004年3月号

百々徹の驚異的な才能を知らしめるのに十分な傑作(中山智広)

 
ホロヴィッツが弾くモシュコフスキーの曲を思わせる印象的なイントロから始まる #1は、百々徹の驚異的な才能を知らしめるに十分である。 誰にも似ずに、しかし堂々とジャズピアノの王道を行く彼は、もはや日本人としては並ぶものはないかもしれない。 ひょっとしてブラッド・メルドーに比肩するのではないだろうか(そう言えば二人とも左手が恐ろしく利くし)?  この彼の2作目を聴いた時に、まず感じたことである。 前作のレビューでも書いたが、とにかくピアノの発音、強弱、タイミング、ビート、グルーヴ等に対する意識の鋭さというか、レベルが恐ろしく高い。 これは最近多い、クラシックをやってて指がよく動きます、という人たちの次元ではない。 スイングする真のジャピアノの方法を完全に知っているという事である。 そして #3 #10 に聴かれる独特な和音や、 #1 #4 #6 のユニークなリズムは、まさしく独創的だ。 現在活動しているニューヨークで、共演したベニーゴルソンに褒められたというのも当然である。 高度だが、自己満足的なもの、奇を衒った難解さは一切ない。 僕は全ての演奏が美しいと思ったが、ジャズを本当に好きな人ならば、オリジナル曲の良さは十分受容できるはずだし、 #2 #9 のポピュラー曲もあるので、初心者もぜひ聴いて欲しい。 今、日本ではピアノブームさが、もしこの人が理解されないようならば、表面的なブームだと言わざるを得ない。 傑作だ。

Jazz Life 2004年3月号

コミカルでリリカルでトリッキーな、NY先端ミュージック(長門竜也)

 
1年半前のデビュー盤『 DODO 』で清楚かつ技巧的ピアニズムを披露しながら、拠点を NY としたため姿の窺い知れなかった才人。 バークリーを首席で卒業するとブロードウェイのクラブでセッションリーダーをこなし、様々な音楽家たちとストイックに渡り合う百々である。 久しぶりに我々の面前に現われたその音は、前作にも増して変則的拍子&構成をみせながら、よりダンサブルでカラフルな遊び心を満載していた。 アイディアに溢れ、止まるところを知らぬと見せながら、緻密な仕掛けを細部にまでいきわたらせる学究派ぶりも覗かせるから、目まぐるしさの中で放心しながらも存分に納得させられる。 名手ロジャース ~ ラムキンを従え、 NY 最先端の新志向ジャズを極めた。

 CD Journal 2004年3月号 

モダンジャズの王道なのに新しい (小川隆夫)

百々徹(どどとおる )という名前は今後頻繁に登場することだろう。 デビュー作となった前作の『 DODO 』でも端麗なプレイを聴かせていた彼が、まったく同じメンバーで吹き込んだこの新作では一層パワーアップして戻ってきたからだ。 基本はビバップやハードバップである。 それほど新しいスタイルではない。 それでも彼のピアノプレイはいまのジャズシーンにあって新鮮な響きを有している。 目新しいことを追求してもジャズの新しいサウンドが獲得できるわけではない。 そのことを教えてくれるのがこの作品だ。妙な小細工や仕掛けもここにはない。 お馴染みのピアノトリオという編成で、モダンジャズの王道を行く演奏を繰り広げる。 それでいて聴くものの心を捉えて離さない魅力が百々のピアノにはある。 そこが何よりも大切だ。 前作を録音した時点(2002年)では無名だったふたりのサイドマンも、いまでは存分に実力が発揮できるまでになった。 それもあって、これは頼もしい限りの一枚だ。

by Chihiro Nakayama from Swing Journal March 2004

This is the masterpiece that proves Toru Dodo's amazing talent

The opening track that starts off with an impressive introduction, that reminds you of Horowitz's rendition of Moszkowski, proves nothing but Toru Dodo's amazing talent. I'm wondering if any other Japanese pianist can parallel to him at this point, who has his own style and play authentic jazz. Maybe he can be compared to Brad Mehldau on the basis of both of them can use their left hand so dexterous. The first thing I noticed was that (I also wrote this for his previous CD) his sense about the articulation on keys, dynamics, timing, beat and groove is very high level. It's beyond some of the pianists who has classical background so can move their fingers quickly. He knows how to swing, the right way of playing jazz piano. His fresh harmony on #3 & # 10 and his unique rhythm pattern on #1.#4,#6 are very innovative. No wonder Benny Golson praised him when they played in NY where Dodo lives. It's very high level but not self - indulgent. Not unconventional. I felt every performance on this CD was beautiful. I'm sure real jazz fans can appreciate his masterful original compositions. There are a couple of famous tunes (#2 & #9) in it so I think beginners can enjoy it as well. Nowadays, the piano music is a big trend in Japan but I have to say it would be superficial if Toru Dodo were not recognized. This is a masterpiece.