Reviews on DODO 3 (Japan)

Jazz 批評 2008年11月号 ( 吉澤審一 )

通常は彼はニューヨークで活動をしている。偶々約一年前東京に帰ってきて、3回ほどジャズクラブに出演した。その時すでにこのCDを聴いて彼の人間離れした表現に興味をもち、ぜひ生の音を聴いてみたいと出かけた。彼のピアノはまさに異星人のピアノであった。超高速ピアニッシモフレーズで先ず驚かされる。次はそのフレーズの行きの長さに驚かされる。そして、多分、4分の4拍子を4分の4拍子でのらない、変拍子に割るスイング感に驚かされる。そして、1曲を聞き終わる頃には、もう彼の虜になっている。しれを何食わぬ顔をして、飄々と演奏する彼のユーモアとスタイルに魅了される。そんな彼を聴ける最新のCDがこれだ。果たして『サザエさんのテーマ」がジャズになるのか?

Swing Journal 2006年3月号

奇を衒わずとも、まだまだジャズは新しくて面白いと思える(中山智広)

 
NY 在住11年になる百々徹の3作目。 彼は現在33歳で、とここまで書いて、この人はこんなに若いんだ、と驚いてしまった。彼の自己確立度、音楽の成熟度には常人の域を遥かに超えたものがある。 彼のピアノの技量は日本人では段トツで、ここ近年デビューした他の人の音が、未熟なものに聞こえてしまう。  近代音楽をジャズに混入したようなオリジナル曲も、全く個性的で面白い。 そして今回は彼の音楽が持つ独特なクールネスに、くつろぎやユーモアまでもが加わった。  1、3、12等の独特な間合いやカウンター・ラインには「百々節」ともいうべき個性が明確に出ている。 そして本当のジャズのリズム感とは、ビートに対して微妙にズレて、深くノル事だと思うのだが、彼はその能力も高く、8や16ビート系のリズムでも完全にジャズになる。 2は鋭いタッチの演奏だが、柔らかいタッチの10等と比べると、サウンドの豊富さに驚かされる。 4、7はドビュッシーを思わせるクラシカルなオリジナルだが、これも完全にジャズになっている。 流行の「クラシックのジャズ化」が皮相的に聞こえる程の、深い音楽だ。 地下鉄の実況音をバックにした5、野球をモチーフにした8にはNYらしいスピード感が心地よく、巧みな解釈の11には余裕やユーモアさえ感じられる。  そう言えば来日時の彼は、ユーモアを交えた MC で観客を笑わせていた。 奇を衒わずとも、まだまだジャズは新しくて面白いと思える作品。

Jazz Life 2006年3月号

繊細なタッチと変化に富んだ曲想で 独自の世界を響かせる3作目  (青木和富)

 
ニューヨーク在住のピアニスト百々徹の3作目は、これまでと同じトリオ演奏で、ほぼオリジナルで固められている。 違うのはメンバーだが、百々のこれまでのアルバムと基本はそれほど変らない。 この変らないことが百々の音楽への独特なスタンスとつながっている。 これは百々が変化を嫌うからではなく、むしろその柔軟な感性の広がりが、小手先の変化の意味を消してしまうのだ。 繊細なタッチと変化に富んだ曲想(どの曲、どの演奏をとってもエスプリがきいている)、そして、何よりもそれらをまとめるバランス感覚。 それらすべてがこのアルバムで伸張している。 マイナー・ポエットの素晴らしい存在感とでも言いたい。

週間金曜日 2006年3月31日号

奇をてらわず等身大  (後藤誠)

1972年東京生まれ。 米国在住11年目を迎えるピアニストのサード・アルバム。 共演の2人もニューヨークで活躍する若手。 奇をてらわず、あくまでも「等身大の音楽」といった感じの 演奏が続く。 スタンダードやオリジナルだけではなく、誰もが知っている「サザエさんのテーマ」もレパートリーにする「懐の深さ」に脱帽。

CD Journal 2006年3月号(村井康司)

NY 在住のピアニスト、百々徹の3枚目のリーダー作だ。 増尾好秋のプロデュースによるピアノトリオ作品という点では前2作と同じだが、ベースとドラムスが替わり、さらにシャープでスマートなサウンドが聴ける作品となっている。  百々のピアノは硬質な切れ味のよさとメロディアスな叙情性を兼ね備えたもので、彼の作るオリジナル曲の魅力も同じところにありそうだ。 ちなみに「サザエさん」主題歌を、あのメロディはそのままに、実に現代的なジャズに変身させてしまった「For Mr.M.」は、プロデューサーの“マスオさん”に捧げた。