Reviews on Do You Like Cappuccino? (Japan)

Swing Journal 2008年11月号,
自身のレーベルからの第一作で、より強い意欲を発揮(小川隆夫)

ニューヨークに活動の拠点を置くピアニスト、百々徹の新作。今回は自身のレーベル、D0&Doからの1作目ということもあって、これまで以上に強い意欲がプレイに感じられる。曲によってはエレクトロニックベースやチェロも加え、過去に追求してきたピアノトリオサウンドの拡大が図られている点も好ましい。テクニックと表現力に関しては、これまでに発表された2枚の作品で十分すぎるほどに堪能させてもらった。その上で、今回はさらに発展的な音楽生を示してみせる。その好例が1である。セロニアスモンクの愛奏曲を、モンク的でありながらモンクとはまた違った味わいで弾き切ってみせる実力。モダンジャズの伝統をしっかりと受け継ぎながら、いまの自分を表現してみせるとでもいえばいいだろうか。百々はニューヨークの荒波に揉まれ、着実に成長してきた。変化に富んだ2の展開も彼ならではだ。従来のジャズ的な表現から抜け出し、百々が奔放に音を紡いでいく。この自由な発想と方向性が今後の彼をいっそう楽しみにさせてくれる。変化をつけるだけなら、一線で活躍しているプロにとってそれほど難しいことではない。しかし、それに意味がなければ単なるアイデアで終わってしまう。この作品を聴いて思ったのがそのことだ。ここには百々がこれまでの作品で積み重ねてきたさまざまなアイデアの膨らみが認められる。それがなによりの収穫だ。

JazzTokyo.com 2008年12月(稲岡邦弥)

ドゥー・ユー・ライク・カプチーノ?”“Yes, I’m lovin’ it!” あっ、これはマックのキャッチ・コピーだった。はい、僕はカプチーノ大好きです。あのシナモンの香りがね、たまらないですね。それにしても思い切ったタイトルですね。ド(ド)トールさん。カプチーノで忘れられないのはNYのスタジオで差入れてもらった一杯。ドラムのダギー・バウンの粋な計らいだった。藤乃家 舞voのセッションだったから、96年? NYのカフェでは出がらしのコーヒーみたいなヤツばかり飲まされてたからダギーのカプチーノは文字通り干天の慈雨だった。さすがミュージシャン、美味しいものは外さないなと思った。ちなみに、初めてのスターバックスのテイクアウトだった。今でこそどこでも手軽に飲めるけどね。 1. はグリア、6.はいずみたく、9.がエリントン、それ以外はドドさんの オリジナル。<カプチーノ>は3曲目に登場する。ボサノバ調で。甘さやや控えめ、グッとシナモンを利かせた演奏だ。それにしてもアイドルのモンクのフェイヴァリットをオープナーに持ってくるなんてたいした自信だ。さすが、しっかりモンク風ドド調になってる。これだけじゃない。どの曲も100%C調、いや、ドド調。<夜の星を>はソロだけど、ブギウギ調だもんね。しかもスクラッチ・ノイズ入りで! SP時代の思い出?シンセのクレジットがあるがこれは5.と10.でSE的に使われており、主体は全曲ナマ・ピアノである。あの過酷なNYでジャズ・ピアニストとして生き抜きながら、こういうウィットと今日性に富んだアルバムを制作できるドドというミュージシャンは、相当豊かな精神生活を送っているに違いない。ビター&スィートなNYのエッセイスト、さしずめピート・ハミルのエッセイ集に遊ぶような一作である。 バークリー音楽院を首席で卒業、NYで活動を始めたのが98年というから、ちょうど10年目。その節目の年に自主レーベル「DO&DO」を始め、セルフ・プロデュースで4作目を制作したという。バリスタが思い切って独立、自らカフェを始めたようなもんだろう。発売は変わらずインディ系のミューザック。フィフティ・ファイヴの中村健吾b(同じ頃に5作目『ジェネレーションズ』をリリースした)といい、成長を見守ってくれるサポーターが付いているのは心強いもんだ。 ところで、ドトールではカプチーノ、飲めますか、ド(ド)トールさん?

DiskUnion Jazz館

日本人離れしたセンスで様々な方面から話題を集めるピアニスト、百々徹の4枚目となるリーダー作。タイトルの『ドゥ・ユー・ライク・カプチーノ?』は自身の名前「ドドトール」と大手コーヒーチェーン「ドトール」をかけてつけられたものだとのこと。非常に独特の美しく澄み切った音色とポップで不可思議なメロディセンス、洒脱で洗練された音づかい、という百々らしさにより磨きがかかっています。端正な親しみやすさと現代的ジャズ・ピアノの最先端の洗練が見事に結びつき、他に類を見ないながらも多くの人に親しまれてしかるべき傑作へと仕上がっています。

Jazzpage.net

ニューヨークを拠点に活動している実力派ピアニスト、百々徹の2年半ぶりのニュー・アルバム。自身のレーベルDO&DOの第1弾。これまでも、間を生かした説得力のあるプレイで聞き手を唸らせて来たが、本作では、中村恭士のベースとロドニー・グリーンのドラムスのトリオにデヴィッド・エッガーのチェロを加え、美しさとリリシズム溢れる瑞々しいサウンドを聞かせてくれる。アルバムとして構成もよく配慮されており、独自のコード解釈でスリリングな” ジャスト・ユー、ジャスト・ミー”の次は”ワ・ワ・ワ・ワ”というコミカルな曲。チャーリー・ヘイデンの”サイレンス”を想わせるリリカルな”サハラ”の後はレコードのノイズを効果音に使用したレトロ感一杯の”見上げてごらん夜の星を”が続く。最後は、この上なく美しい”エアー”で終幕するといった演出で、聞き手を飽きさせない。進境著しい百々徹の才能が全面的に発揮された秀作だ。
 

CD Journal.com

エリントンやモンクやいずみたくの曲も演奏しているが、魅力的な自作曲も並ぶ。音楽のヴァリエーションが豊富で、演奏レベルも高く、斬新なアプローチで演奏したかと思えば、ちょっぴりノスタルジックな情緒漂う演奏も……。何よりピアノの音がよく鳴っている。